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莫言氏の受賞は日中関係修復へのシグナル

 ノーベル文学賞は、中国人作家の莫言氏が受賞しました。村上春樹氏も有力視されていましたが、「日中対決」とも言われた今回の文学賞は、中国が制した形となりました。中国人は喜んでいますが、この選考は中々興味深いものがあります。

 莫言氏と20年以上の親交がある毛丹青・神戸国際大教授(日本文化論)によると、莫言さんは約10回も来日し、温泉と刺し身が好きという親日家だそうで、昨年7月には毛教授が客員教授をしている神戸市外国語大で講演し、昔は高級料理だったギョーザを食べたくて作家を目指したエピソードなどを披露しています。(本日付「毎日新聞」) 温厚な風貌そのままの人柄のようです。

 「NHK NEWS WEB」は、本日付でこう報じています。(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121012/k10015688211000.html)

   ノーベル賞・莫言氏“日本の読者に感謝”

ノーベル文学賞を受賞した莫言氏は、11日夜、自宅がある中国山東省で記者会見をして喜びを語るとともに、日本の読者に対しても、「私の作品を深く理解してくれている」と感謝の意を示しました。

ノーベル文学賞の受賞を受けて、山東省の農村にある自宅近くのホテルで記者会見を開いた莫言氏は「食事中に受賞の連絡があり、非常に驚いた」としたうえで、「私は中国の一般庶民の文化や風情を庶民の目線で描くことに力を尽くしてきた。だからこそ国境や民族を超えて評価されたのだろう」と述べました。

また、みずからの作品が中国の政治や社会問題への鋭い批判を含むことについては、「一人の作家が庶民の苦しみに関心をもつかぎり、作品は自然に社会への批判がにじむ」と述べました。

そして莫言氏は、日本でも多くの作品が出版されていることについて、「日本では一般の読者が私の作品に対して驚くほど深く理解し、私にとっても非常に新鮮な理解の仕方を提供してくれる。日本の読者に感謝し、日本の人々にごあいさつ申し上げたい」と述べました。

さらに、莫言氏と並んで有力な候補と言われていた村上春樹氏については、「独特の文体を作り、人間の生活を描いた作品は非常に優秀で、完全に受賞の資格があると思う」と話していました。


 莫言氏の手法は「魔術的リアリズム」と呼ばれるもので、川端康成の「雪国」など日本文学の影響を受けていると言われています。中国の体制批判もしていますが、それほど激烈なものではなく、当局は許容範囲と捉えているようです。

 民主派の中国人は莫言氏に批判的ですが、共産体制下ですから致し方ないでしょう。2年前の2010年にノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏に対しては、当局は弾圧を加えて言論活動を封じています。こうなったら何もできませんから、体制批判をしようとしたら相当な工夫が必要となります。

 日中関係が最悪の状態にある中で親日家の莫言氏がノーベル文学賞に選ばれたのは、関係修復の契機にしたいという選考委員会の意図が感じられます。山中伸弥氏に続いて村上春樹氏が受賞したら、日中関係は更に冷え込んでしまいます。ノーベル賞には常に、政治的な意図が込められています。

 莫言氏の受賞を予測させるような動きが少し前に見られました。日中関係を修復させるべく、中国の知識人らがネット署名を始めたのです。朝日新聞は、8日付でこう報じています。(http://www.asahi.com/world/china/news/TKY201210080356.html)

   「中日関係、理性取り戻せ」 中国の知識人らネット署名

 尖閣諸島を巡る日中の対立を受け、中国の知識人が「中日関係を理性的なものに戻せ」と訴える署名活動をネット上で始めた。署名の呼びかけに対して批判的な声が寄せられる一方、民間レベルでの事態打開の動きとして、共感も広がっている。

 呼びかけたのは、中国の言論や人権状況について発言を続ける女性作家の崔衛平氏(56)。仲間数人と10項目の文言を練り、4日から公開した。7日夕の段階で、著名な人権活動家の胡佳氏や法学者の賀衛方氏のほか、各地の医師や報道関係者、学生ら467人が実名で署名した。

 呼びかけは、9月の反日デモが暴徒化したことについて「我々は非常に心を痛めている」と批判。日本関連の本が一部書店から消えるなど、文化や経済面に影響が及んだことについて「極めて賢明さを欠く」と強調し、中国政府に「民衆が理性的に考え、行動するよう導く責任がある」と注文した

 尖閣諸島の帰属については日本側の説明が「説得力に欠ける」とし、トウ小平(トウは登におおざと)氏らが提唱した「争いは棚上げする」という状態に戻すべきだとした。対立の根底には戦争に対する歴史認識の違いがあるとしつつ、「私たちは日本人が平和再建のために尽くした努力を見てきた。今日の現実に基づいて日本を判断すべきだ」と、民族主義をあおる中国側の言論も戒めた

 崔さんは反日デモが暴徒化し、商店から日本製の家電などが撤去された状況を目の当たりにし、「社会から理性が消える危うさを感じた」と話す。仲間からは「国家間の問題に首を突っ込むべきではない」との声もあったが、作家の大江健三郎氏ら日本の民間人が声を上げ始めたことを知り、背中を押されたという。

 崔さんのブログには「売国奴」といった批判も相次ぐ。崔さんは「署名してくれたのは、どんな批判を浴びるか分からないリスクを背負う勇気のある人たち。その背後には、今の空気に違和感を感じながら、声を出せないでいるもっと多数の市民がいる」と話す。(北京=林望)

     ◇

 日中関係の改善を求めて、中国の知識人がネット上で行っている署名の呼びかけ文の要旨は以下の通り。

 1 釣魚島(尖閣諸島の中国名)問題は「争いは棚上げする」という状態に戻すべきだ

 2 日本政府の釣魚島の帰属に関する論証は説得力に欠ける。まず戦争の過去に十分な認識を持ち、徳をもって人を説得する必要がある。そして新たな争いを作ったり、過去の恨みをあおったりしてはいけない。

 3 あらゆる対話や協議を通して、日本や周辺国家と平和で安定的な関係を維持することを望む。

 4 多くの日本人が戦争への謝罪と平和再建に努力したこと、そして日本が中国の発展に援助したことを見てきた。歴史を正視しつつ、日本について新たな認識と判断をする必要がある。

 5 自己の目的や利益のために、領土紛争を挑発し、民意をもてあそび、民族主義的感情をあおり立てる集団や党派に警戒し、反対する

 6 9月中旬に中国国内で起きた打ち壊しや焼き打ち行為に、非常に心を痛め、強く糾弾する。

 7 できるだけ早く民間の経済、文化、暮らしの協力・交流を復活し、争いで起きた損失を補い、長期的視点を欠いた措置を取り除く。

 8 政府は主権問題を扱う時に、民衆をないがしろにせず、民衆の意見に耳を傾ける必要がある

 9 中国と日本の教科書に、両国の真実の近現代史を掲載するべきだ。

 10 領土や国家主権などは両国政府だけに責任があるわけではない。民間交流のチャンネルを発展させ、相互理解を増やし、子々孫々までの平和な未来を創造する。
 (下線は引用者による)

 これは非常によいですね。とても冷静で建設的な提言です。日中両政府は、こうした良心的な国民の声に真摯に耳を傾けるべきです。

 我国にも、石原慎太郎のような嫌中派が少なからず存在しますが、問題なのは日本人を憎む愛国教育を推し進める中国政府の在り方で、国民はその被害者です。知識人はもちろんこの点に気付いていますが、一部の無知蒙昧な人々やヤクザ集団が政府の扇動を受けて暴走しているのです。

 悪党集団はどこの国にも存在しますが、そういう人たちと一般の良識ある国民を同一視すれば不幸な結果しかもたらされません。相手を間違えないことが肝要でしょう。

 崔衛平氏ら実名で署名した人たちはとても勇気のある人たちで、中国人の良心を代表しています。我々日本人は、こういう人たちと連携して共存共栄を図ってゆく必要があります。
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Author:陽光堂主人
十代から本を乱読して得た雑多な知識と実務家としての経験とを併せて、新刊書を話のネタに世の中の真実を追究します。主なジャンルは、政治経済・歴史・精神世界です。「陽光堂主人」は、某月刊誌で使っていたペンネームです。

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